歯の詰め物・被せ物:保険と自費
2024.02.20
最近では見た目の美しさや金属アレルギーへの配慮などにより、なるべく金属を使わない白い詰め物や被せ物が選択されるようになりました。
保険診療でも白い詰め物や被せ物を入れられるようになりましたが(症例によります)、自費診療の材料とはその特性が全く異なります。
とはいえ、保険診療と自費診療では費用が大きく異なるため、簡単に自費診療を選択するわけにはいきませんよね。
ここでは保険診療と自費診療で使用される詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)の材料特性の違いを簡単に説明しますので、ご自身でもその違いを理解し、納得した上で保険診療もしくは自費診療のどちらかを選択するようにしてみてください。
Contents
保険の白い歯の材料
保険では「ハイブリッドレジン」と呼ばれる材料が適用されます。
「ハイブリッドセラミック」と呼ばれる場合もありますが、基本的にはレジン(プラスチック)にセラミックの粒子を混ぜた材料になり、セラミックとは全く異なりレジン(プラスチック)の特性がベースにあります。
自費の白い歯の材料
自費では「セラミック」と「ジルコニア」のいずれかが適用されます。
ジルコニアはセラミックじゃないの?
ジルコニアもセラミックの一種なのですが、人工ダイヤと呼ばれるほどセラミックの中でも最高強度を誇り、通常はセラミックと分けて「ジルコニア」と分類します。
メタルボンドって何?
金属の表面にセラミックを盛り付け白い歯に見えるように作製したものを「メタルボンド」と呼びます。「陶材焼付前装」とも言います。
見た目はセラミックですが金属を使用しているため、裏側を覗くと金属色が見えたり、歯肉が黒くなってしまうなどのデメリットがあります。
陶器のお皿が硬いのに落とすとすぐに割れてしまうのと同じで、以前のセラミックは強度が弱く単一で使用することができなかったため金属を使用して補強する必要がありました。
現在ではセラミックの強度も改良され、また単一の材料で作製されるものの方がより強度に優れているため*、現在はセラミック単一で作製されることが多くなっています。
*2種類以上の材料を組み合わせて作製すると、単一の材料で作製するものに比べ、組み合わせたその界面に構造上の弱点が生じ、壊れやすくなります。
ジルコニアセラミックって何?
金属の代わりにジルコニアを使用し、その表面にセラミックを盛り付けて作製したものを「ジルコニアセラミック」と呼びます(各クリニックで呼び方は異なるかもしれません)。
セラミックの強度を補強する目的と、より審美性を増すために作製されます。
以前のジルコニアは強度は最強ですが光の透過性が悪く審美性に欠けるデメリットがありました。しかし現在では透光性を改良し審美性にも優れたジルコニアが開発され、ジルコニア単一で作製されることも多くなっています。
セラミックの代表「e.max」
セラミックも含有成分により細分化されますが、現在セラミック単一で作製されるものは、大変強度に優れている「二ケイ酸リチウム」を主成分としたものが広く用いられています。
その代表的なものがイボクラール・ビバデント社の「e.max(イーマックス)」になります。本ブログでセラミックは「二ケイ酸リチウム」の材料特性を指して説明します。
ジルコニアにも種類がある?
細かく言うとジルコニアも組成の違いによりいくつかの種類に分けられますが、かなり複雑な話になってくるので本ブログでは詳しい説明を省略します。
耐久性があり長持ちするのは
傷のつきやすさを表す硬度は
「ジルコニア > セラミック > エナメル質 > ハイブリッドレジン」
の順でジルコニアが一番硬く傷つきにくい材料となります。
また壊れやすさを表す曲げ強度は
「ジルコニア > セラミック > ハイブリッドレジン > エナメル質」
の順でこちらもジルコニアが最強で壊れにくい材料であることがわかります。
これらのことからジルコニアが傷もつきにくく壊れにくいため一番長持ちする、耐久性があると考えられます。
一方、ハイブリッドレジンはエナメル質より強度があるので壊れはしませんが(きちんと規格通りに歯を削り作製すればの話ですが)、硬度が低いため咬んでいるうちにすり減って噛み合わせが変わったり、変形して脱離してしまうといったデメリットがあり、恒久的な材料とは考えにくいです。
咬み合う歯に優しいのは
硬度が高いから、つまり硬いからと言って咬み合う歯を摩耗してしまう(削ってしまう)というわけではありません。
ジルコニアは硬度は高いですが表面をつるつるに研磨して「鏡面仕上げ」にすることが可能な材料で、咬み合う歯との間で最も摩擦が生じにくく、実は一番咬み合う歯に優しい材料であることがわかっています。
但し、咬み合う歯のエナメル質の亀裂を発生させる恐れがあるため、噛み合わせの調整は十分にする必要があります。
歯科医師が時間をかけて違和感のないところまで十分に噛み合わせの調整をしてくれているか、また噛み合わせの調整をした後は時間をかけて削った部分を研磨しているかが注目すべきポイントになるでしょう。
汚れやすさ・清掃性の点は
鏡面研磨で仕上げたジルコニアが一番プラークがつきにくいという報告が数多く出ています。
また、ジルコニアは硬度が高いため長期経過においても微小な傷もつきにくく汚れも落としやすいと言えます。
セラミックも十分な硬度があり傷もつきにくいため長期的に汚れも着きにくく清掃性にも優れていると考えられます。
一方ハイブリッドレジンは長期経過において表面のこすれや傷が生じるため、汚れも着きやすくなり清掃性も悪くなっていくと考えられます。
審美性が長もちするのは
これは圧倒的にジルコニアとセラミックが優れています。
長期間経過しても艶が落ちず変色もほとんどありませんし、表面的な着色も非常につきにくいです。
一方ハイブリッドレジンは時間とともに艶が消え変色が起こります。表面的な着色も着きやすく、前歯に装着する場合は数年後には入れ替えなければならないと考えておいた方が良いでしょう。
歯を削る量はちがうの?
材料の特性上、ジルコニアとセラミックに比べハイブリッドレジンはより厚みを持たせる必要があるためその分歯を削る量も多くなります。
そのため神経のある歯を削る場合には治療後に歯がしみる症状も出やすくなります。
また、すでに金属が入っている歯をやり直す場合には、金属を外した後に材料の厚みを確保するためさらに削り込む必要があります。
以上、保険の白い歯と自費の白い歯について簡単にご説明いたしました。
治療の際は納得いくまで説明を受け、ご自分に合ったものを選択するようにして下さい。
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