歯肉がはれた 咬むと痛む:歯根破折
2024.11.05
歯肉が急に腫れて咬むと痛みがあり強く噛めない。鏡で見ると歯肉におできの様なできものができている。そのような症状がある方は参考にしてください。放っておいても治らない場合がありますので、自己診断は要注意です。
歯肉が腫れる主な原因には
「歯肉炎」
「歯周炎」
「歯の根の周りが膿んでいる」
「歯ブラシなどで歯肉を傷つけた」
「良性・悪性腫瘍」
などが考えられますが、「おできの様なできものができている」場合に最も考えられるのが「歯の根の周りが膿んでいる」状況です。
おできの様なできものは「フィステル(サイナストラクト)」と呼ばれるもので、歯の根の周りに溜まった膿の出口となっています。
指で押すと弾力があり、表面が破けると中から出血を伴う黄色い膿が出てきます。
フィステルが破けて膿が出ると腫れた感じが引き一時的に痛みも和らぐことがありますが、完治したわけではないので注意が必要です。腫れを繰り返すことも多くあります。
下に示す写真は左下の銀歯の根元の歯肉が腫れ強く噛むと痛むということで来院した患者様の口腔内写真です。
銀歯の根元、歯と歯肉の境目よりも少し下方にずれたところにフィステルができています。
その手前の歯の歯肉には異常は認められません。
歯磨きもきれいにできているようなので「歯肉炎」、「歯周炎」で腫れているようではなさそうです。
この時点で「歯の根の周りが膿んでいる」もしかすると「歯の根が割れているかもしれない」ということが考えられ、レントゲン撮影をすることにしました。今回は患者様の了承を得てCT撮影も行いました。
上に示す通常のレントゲン画像では少しわかりづらいのですが、下のCT画像では銀歯の周りの骨が明らかに溶けてしまっているのがわかります。
歯の根を観察すると縦に線が入っているように見えます。
今回は残念ながら歯の根が割れていること(歯根破折)が原因で歯の根の周りが膿んでいる状況であるということがわかりました。
歯の根が割れてしまっているので、患者様の同意のもとその場で抜歯をすることにしました。
抜歯した歯を観察すると、CT画像で見えた通り歯の根が縦に割れていました。
根が割れているのでかぶせ物もすぐにとれましたが、金属の内面は思った以上に黒く汚れている様子が認められました。
本症例の場合はもともと後ろの2本の歯がすでに抜かれていたこともあり、抜歯後はインプラントを埋めるか部分的な取り外しの義歯を装着するかの選択になります。
歯根破折は根の治療をした歯(神経を抜いた歯)に起こる事がほとんどです。その原因は、
過剰な力がかかってしまった
不適切な修復物が装着されていた
根の治療により根が脆弱化していた
などが考えられます。
歯根破折を予防するには、何といっても神経を抜かなくてはいけないような深い虫歯を作らないようにすることです。
生活が不規則であったり、糖分を摂取する機会が多い方は虫歯の進行も早くなりますので、定期的に歯科健診を受け、虫歯が深く進行する前にしっかりと治療をする必要があります。