知覚過敏の治療:高濃度フッ素塗布
2023.10.24
冷たいものを飲むと歯がしみる、歯を磨く時にハブラシでこすると歯が痛い、けれども鏡で見ても歯が黒いわけでもなくむし歯ではなさそうだ、といった場合には「知覚過敏」になっているかもしれません。
Contents
知覚過敏の症状
知覚過敏の主な症状には「冷たい飲食物がしみる」、「甘いものを食べるとしみる」、「ハブラシでこするとしみる」等があります。
刺激を受けると鋭い痛みを瞬時に感じますが、痛みは数秒から数十秒で引いていきます。また、安静にしている時に痛むようなこともありません。
咬んだり歯をたたいたりして痛みが出ることもありません。ただし、歯の咬む面(咬合面)がこすれてエナメル質が欠けている場合に生じる知覚過敏では物を咬んだ刺激で痛みを感じることがあります。
むし歯と異なり、日増しに痛みが強くなることもありません。日によってまたは季節によって症状が出たり落ち着いたりするのも特徴的です。
知覚過敏の原因
歯の表面はエナメル質に覆われており、健康的な状態では飲食や歯みがきで歯が痛むようなことはありませんが、エナメル質が摩耗したり溶けたりして象牙質が露出してしまったり、またはエナメル質に覆われていない歯の根が歯肉が下がることにより出てきてしまうと痛みを感じるようになってしまいます。
歯肉退縮
歯肉は加齢とともにわずかに下がってきますが、それ以上に歯肉を下げてしまう原因は歯周病と圧の強いブラッシングです。若い方でも歯肉退縮は起こりうるので気を付ける必要があります。
歯の生え方、噛みしめ癖、かみ合わせ等も歯肉退縮の原因になると考えられていますが、ご自身で今すぐに改善できることは「歯の磨き方」でしょう。汚れのつきやすい歯と歯茎の境目を力を抜いて優しく丁寧に磨くようにしてください。
歯の破折
歯をぶつけたりして歯が欠けてしまうとエナメル質の下の象牙質が露出してしまうのでしみる症状が出る場合があります。
歯のすり減り
歯を使ってお食事をする以上、少しずつ歯はすり減ってきます。特に噛みしめ癖の強い方や歯ぎしり、食いしばりがある方はさらに歯は減りやすいと考えられます。歯のすり減りによって象牙質が露出するようになるとやはりしみる症状が出る場合があります。
歯の溶け
歯は酸性になると溶ける性質があります。通常の飲食では唾液の作用でお口の中は速やかに中性に戻るので歯が溶ける心配はありません。
しかしだらだらと甘いものを食べ続けたり、頻繁に炭酸水などの強酸性の飲み物を飲んだり、晩酌が長引くと(お酒は酸性飲料です)、歯はその分長時間にわたり酸にさらされることになるので溶けてしまう確率が高くなります。
歯の表面のエナメル質が溶けきってしまうと象牙質が露出するのでやはりしみる症状が出る場合が生じます。
知覚過敏の治療方法
象牙質や歯根の表面が露出すると象牙細管と呼ばれる歯髄までつながる細い管の開口部も露出することになり、その細管を通じ神経まで刺激が伝わってしまうので痛みを感じてしまいます。
そのような痛みを感じるしくみから、知覚過敏の治療方法は大きく3種類に分けることができます。
神経の知覚自体を鈍くさせる
カリウムイオンのイオンバリア効果により知覚過敏を緩和します。
知覚過敏用歯磨き粉に「硝酸カリウム」として含有されています。
即効性はあまり期待できませんので、継続して知覚過敏用歯磨き粉を使用する必要があります。
象牙細管を封鎖して刺激を伝わりにくくする
「シュウ酸」、「高濃度フッ化物」、「リン酸四カルシウム」、「バイオアクティブガラス」等の成分を含む薬剤を歯科医院において塗布します。歯科医院ごとに使用する薬剤は異なります。
即効性がある場合と、何度か来院して塗り重ねる必要がある場合とがあります。効果は永久に続くものではありません。
患部に塗布する際には若干の知覚過敏様の痛みを伴うことがあります。
「フッ化物(フッ化ナトリウム)」や「乳酸アルミニウム」を含有する歯磨き粉も象牙細管を封鎖する目的で使用することができます。
※当院ではシュウ酸を含有する「スーパーシール(保険適用)」および「エナメラスト(自費診療)」を使用しています。
象牙質や歯根表面をコーティングして刺激を伝わりにくくする
歯科医院で薬剤を塗布し象牙質や歯根表面を物理的にコーティングし封鎖します。即効性が期待できますが、効果は永久に続くものではありません。
これら3種類の治療を単独で行うこともありますが、いくつかを併用して行うことでより効果が出る場合があります。
知覚過敏への高濃度フッ素塗布
当院では知覚過敏治療として「エナメラスト」を使用した高濃度フッ素塗布を行っています。ホワイトニング前後にもお勧めです。
エナメラストのフッ化物濃度
22,600pmという非常に高濃度のフッ化ナトリウムを歯面に塗布することで象牙細管内や歯質表面にフッ化ナトリウムが析出し、長期的にフッ素イオンを歯質に供給します。この析出したフッ化物によって知覚過敏を抑制します。
歯磨き粉に含まれるフッ化物の最大濃度は1,450pm、歯科医院において小児に使用されるう蝕予防のフッ化物濃度が9,000ppmですから、22,600ppmはかなり高濃度であることがわかります。
エナメラストの安全性
「高濃度」と言われるとフッ化物の体への影響が心配されます。
フッ化物による急性中毒は濃度ではなく量に依存します。フッ化物の急性中毒量(治療などの処置が必要となる摂取量)は5mg/kg(日本歯科医師会 ホームページテーマパーク8020参照)なので、例えば体重60kgの成人のフッ化物急性中毒量は300mgになります。
エナメラストは患者様ごとに使用できる個包装に分けられており、内容量は0.4mlとなっています。ですからフッ化物1回使用料を概算すると約9mgとなり上記の300mgよりも十分少ない量であることがわかります。
エナメラストは非常に高濃度ですが、1回の使用料が少ないため、万一すべてを飲み込んでしまったとしても十分安全なフッ化物量におさまっています。
エナメラスト塗布後の注意点
エナメラストを十分歯質に浸透させるために、塗布後4~6時間は歯みがきやフロスを使用することができません。アルコールを含むマウスウォッシュの使用もできません。
また、同じく塗布後4~6時間熱いもの、硬いもの、粘性のあるもの(飲料を含む)は摂取できません。
治療期間と費用
治療は1回で終わり費用は保険診療での検査費用等とは別に1,100円(税込)かかります。3~4ヶ月に1度継続して塗布を続けるとより効果があります。
予約をご希望の方はお電話もしくはネット予約にてご連絡ください。